ジェームズ・ボンドから学ぶ着こなしの鉄則

ジェームズ・ボンドが世界的に有名な映画の登場人物であることは間違いありません。それと同時に、彼の洋服の着こなしはとても洗練されていますね。世界中の誰もが彼の様な着こなしに憧れますが、それを完璧に真似る事はとても簡単な事ではありませんよね。

ですが、そんな彼の着こなしの鉄則に触れ、鉄則を知ることで、あなたの装いを一歩でも彼に近づける事ができるでしょう。

 

― 007スタイルの進化

まず、ジェームズ・ボンドが時代とともにどのような変化を遂げてきたのかを解説します。

エージェント007は1962年にSean Conneryに演じられたのを機に、50年以上に渡りハリウッドで愛され続け、受け継がれてきました。そして、時代とともに彼の着こなしも変化を遂げてきたのです。彼は、ディナージャケットから、伝統的なタキシード、スコットランドのハイランドドレス、モーニング、時には黄色いスキーウェアやトロピカルシャツといったすべての洋服を着こなしてきたと言えます。

そんな彼からは、どんな場面であっても常に適した着こなしをしているといった印象を強く受けます。

ですが、実は、洗練されたとは言い切れない着こなしをしていた事もあるんです。それは1970年代の作品に出てきたりするのですが、まさにこの頃のファッション業界は暗黒期であり、その影響を色濃く受けたとも言われています。

そういう意味では、ファッション的な観点でこの作品を鑑賞できるのも一つの面白さですね。

ジェームズボンドは元々、Ian Flemingという作家に書かれた小説上の人物であり、今日語られているボンドほどスタイリッシュではありませんでした。それが、映画化されることによって、20を超える作品において描かれていく中で、様々なデザイナーやスタイリストによって彼の見え方が大きく変化させられてきたと言えるでしょう。

だからこそ、ボンドがハイネケンを飲み、ジレットで髭を剃る姿なんて全く想像できないと思います。いや、想像したくないですよね。

現在は、Daniel Craigが2006年からボンド役を演じていますが、彼がボンドのスタイルを現代のものへと昇華させたと言えるでしょう。

 

― ジェームズ・ボンドの着こなしの鉄則とは?

ボンドの着こなしのを1つのコンセプトに落とし込むのは至難の業ですが、実は11のルールがある事に気付く事ができます。

 

  1. ボンドは洋服の持つ意味、力を理解している

ご存知の通り、ボンドは多くを語るより、自身の行動で示す男です。

彼の洋服、着こなしは、彼が誰であり、どのように見えるかを定義付ける上で大きな役割を果たしています。

2006年に放映されたカジノロワイヤルでは、ボンドが洋服の持つ力を最大限に活用している事が見て取れるんです。

ではまず、カジノロワイヤルを思い出してみてください。まだ観ていない人は是非、一度観てみる事をオススメします。

オープニングシーンでボンドはトロピカルシャツを着ていますね。そして、画中夕食の際には、ボンドガールであるVesperからの意見を受け、夕食に着ていくジャケットを伝統的なタキシードへ変えます。さらに、後半の一番の盛り上がる場面では、スリーピースを着用するという流れになっています。

かなりざっくりとした流れの説明になってしまいましたが、この事から、TPOや相手の好みに合わせた装いをする事がスタイリングを考える上で大切であると言う事は言うまでもありませんが、ボンドが後半の一番盛り上がる場面でスリーピースを着用しているという所に着目です。

ボンドと言えばスーツというイメージかと思いますが、まさにこのスーツの持つ力を映画内でも遺憾なく発揮させているんですね。盛り上がるシーン、つまりボンドが一番力を発揮しなくてはならないシーンでスリーピースを着用しているのです。もし、半そで短パンで敵と戦っていたら、こちらが受ける印象もかなり違ったものになりますよね。

自分の好みだけではなく、場面、場所、相手を考えて、洋服の持つ力を理解した上で、着る服を選ぶ事の大切さを学ぶことができますね。

 

  1. ボンドは自分に何が効果的かを知っていて、それを徹底している

どういう意味でしょうか?

彼は洋服に対して、最大限に機能する事を求め、安価な物を身に着けたりしません。そして、無駄に多くの色を使用せず、限られた色を着用することで、調和のとれた見栄えを維持します。

ボンドの服高そうですよね。高いものをさらに限られた色使いでスタイリングする事によって、あのお洒落な雰囲気は醸し出されているという訳です。

ファストファッションという言葉があるように、安価で洋服が手に入る時代ですが、ボンドを見ていると高い服にも意味があると言う事です。そして、ただ高ければいいという訳ではなく、それらを限られた色使いで身にまとうことで、洋服の持つ最大限の効果を発揮できるのです。

 

  1. ボンドは決して服に着られない

決して、服があなたを着てはいけない、あなたが服を着なくてはならないということです。

さらに嚙み砕いて言うと、あなたの個性を消してしまうほど、洋服が派手になってはいけないと言う事です。

まず、自分は服に着られていないか、今一度鏡に映った自分に問いかけてみてください。

ボンドは服に着られないことの大切さを理解しています。当たり前かもしれませんが、彼が服に着られているシーンは一度も見たことがありません。

彼は落ち着いた色使いをし、シャツは白、柄もほどほど、といつも派手すぎることの無い装いをしています。

 

 

  1. ボンドは時代に合わせた装いをするが伝統を忘れない

ファッションというものは時代とともに大きく移り変わっていくものですが、ボンドはファッションの変遷に対応しながらも伝統を忘れずに生きてきたと言えるでしょう。

70年代、Roger Mooreはsafariスーツ。

90年代、Pierce BrosnanはBrioniのスーツ。

00年代、Daniel CraigはTom Fordのスーツ。

どれも時代に合わせたテーラリングを採用していますが、クラシカルなスーツである事に変わりはありませんね。

流行りの服は買わなくてもいい。ただ、今から20年後、30年後も時代に合わせた着方ができるものを持っておくことが大切なんですね。

三陽商会が出している、100年コートの本質はここにあるのかもしれません。

 

  1. やりすぎない

お洒落をするなら、色で遊びたくなりますよね。でも、ぐっと堪えて下さい。

少しの冒険は問題ありませんが、一番大切なことは、あなた似合う服を着ると言う事です。

何事もやりすぎはよくありませんね。

 

  1. 機能的な服とはジャージだけではない

映画の中で、ボンドはいつも走っていますが、ジャージを着て走っている姿は見たことがありませんよね?時にはテロリストをスーツ姿で追いかけたりしています。

ここでは決して、ジムや釣りにスーツで行った方が良いと言っているわけではありません。

そういった事をする際に、多くの人はジャージを好むと思いますが、ジャージを着用しなくてはダメ、という訳では無いということです。

つまり、靴も、スニーカーでないとダメ、というルールはどこにも無いわけです。時にはジャージやスニーカーよりも、体に合ったスーツやレザーシューズの方があなたをスタイリッシュに見せる上で、機能的に働いてくれる場合があるということです。

 

  1. スタイリングのルールを理解する(時にはそれを破る)

ボンドは間違いなくスタイリングのルールを破ってきたと言えるでしょう。

これは単に、あなたも世の仕来りを破って洋服を着た方が良いという訳ではなく、ルールや仕来りが何かを理解した上で、意図的にそれを破ると言う事は、何も知らずにただ従っているだけと言う事よりも一歩先をいっていると言う事です。

例えば、ボンドはフォーマルなブラックスーツにニットタイを合わせていました。

20年前であれば、誤った装いと認識されていましたが、今日であれば、ビジネスマンがスーツにニットタイを合わせているのは日常的な光景ですよね。

 

  1. 機会に合った装いをする

ボンドは常にビシッと決まっている印象ですよね。

ポーカーでコールをする際にはタキシードに袖を通し、MI6に姿を現す際にはスーツを着ています。はたまた、気温が下がればダウンジャケットを着てブーツを着用して出歩きます。

自分の周囲の環境や目的に合わせた装いをすることで、周囲に洗練された印象を与えられる事に間違いはないでしょう。

 

  1. ベーシックなものは常に良く見える

暗めのデニム、暗めのスーツ、白シャツ、白いポケットチーフ、ニットタイ。

これらは全て、ベーシック中のベーシックなアイテム達です。これらを組み合わせることで、ボンドのような着こなしができるわけです。もちろん、まったく同じ、という訳にはいきませんが。ですが、こういった伝統さを備え持ったアイテム達は、時代の試練を潜り抜け、現代に姿を残しているのです。

そういったものこそ、身に付ける価値があるのではないでしょうか。

 

  1. 困ったらジャケットを着る

ボンドはどんな上着を着ていますか?

という質問に対して、十中八九でジャケットという答えが返ってくるでしょう。もしくは、スーツかもしれませんね。

彼はしばしば、スーツジャケット、ブレザー、スポーツコート、サファリジャケット、ダウンジャケットを着ています。これは、ジャケットというアイテムが彼の見栄えをより完璧なものへと近づけてくれるからです。

何か足りないな、そんな時は思い切ってジャケットを羽織ってしまいましょう。

 

  1. ボンドはスーツの良さを忘れない

2020年、スーツは以前にも増して着用されない時代になってきました。それは、コロナウィルスによる働く環境の変化からかもしれません。はたまた、ファッションの時代の変遷によるものかもしれません。

ですが、ボンドはいつの時代でもスーツを着続けます。なぜなら、彼はスーツの持つ素晴らしき伝統性、スーツの物語る力や権威を知っているからです。それだけでなく、ボンドはスーツが彼を尊敬される人物像に仕立ててくれることも理解しています。

例え周囲がスーツを着ない時代が到来したとしても、是非、スーツを着続けてみてください。

 

― 結論

ボンドの着ているものを全く真似るのではなくて、この鉄則を一つでも服選びの時に思い浮かべて、服を選んでみてください。

きっと、鏡の前にはこれまでよりも洗練されたあなたが立っているはずです。